丘の上から見る景色

 私たちは普段はどうしても日常の様々な制約や既成概念や忙しさ、ストレスなどに知らず知らずのうちに飲み込まれていて、物事をゆっくりと客観的に眺めたり人や物事の裏に隠された良さや問題に気付きにくくなってしまうことがしばしばあるのではないかと思います。知らず知らずのうちに余計なものをしょいこんでしまったり、無理な形で持ったり、抱えたりしていることもあるでしょう。そのような状態が長く続いてくると健全な感覚がだんだんマヒしてしまったり、偏った見方や考え方ばかりになってしまったりということにもなりがちです。そのような状態をたとえていえば、重い荷物をいくつもしょいこみ、抱え込み、手に持ったまま、人ごみの中にもまれて、まわりが見えず自分がどこを歩いているのか行くべき方向がどちらなのか信号も標識も見つからないまま、くたくたになってさまよっている、といった具合いでしょうか。

 そんな時もし少し小高い見晴らしの良い丘に登って、自分の姿を眺めてみたら、どんな風にみえるでしょうか。まわりの様子はどんな風にみえるでしょうか。私はたまにクライエントの方に「少し丘の上にでも登ってみませんか?」というときがあります。もちろんイメージの中での話ですが。まず、丘の上に登るので、いままでしょっていたもの、手に持っていたものは、一度全部ふもとの手荷物預かり所に預けてしまいます。そして軽くなった体で日差しの心地よい草花あふれる野道を自由に登っていき、てっぺんの草地に腰かけます。そして今の自分の姿を眺めてみるようにイメージするのです。

 こうして見ていくと、いままでいかに自分が余計なものまでしょいこんでいたか、いかに無理な態勢で抱えたり持ったりしていたかが少しずつ見えてきたりします。そして、“確かにこれじゃあしんどいよなあ”と改めて思ったりするでしょう。そこで今まで持っていた手荷物の中身を改めてチェックしてみます。そうすると中には“よくよく考えたらこんなものは必要なかったよなあ”とか“これはこうゆう持ち方をすればもっと楽だったのに”というように気づくことも多いのではないでしょうか。また丘の上からだと、ふもとの地形や位置関係がよく見えるので自分の進むべき方向や目的地までのルート、さらにどのルートを通って行った方がよさそうかなどを見つけやすくもなるでしょう。そしてそのようなことの総合的な考えや気持ちの片づけを一人でやることももちろんいいでしょうし、だれか協力してくれる人と一緒にやることもいいでしょう。そしてある程度気持ちや考えがまとまったらふもとまで下りていき預けた手荷物のうち“やっぱりこれは必要だよな”と思える荷物だけで改めて荷造りをして、しょいやすいかけやすい持ちやすいリュックやバックにして、しょい方や持ち方も工夫してできるだけ楽な装備にして再び歩き出せばいいのです。もしまた荷物が重くなったり方向がわからなくなったりしたら、また荷物をおろして丘に登ってみればいいのです。もし皆さんの住んでいる所の近くにそのようなイメージにあう丘や場所が実際にあったら、そこに行ってやってみるのもいいかもしれませんね。